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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第42章 1,380円の恩義


離れることのない手に、待って、と立ち止まる。
「どうした?」「どうした、じゃないのよ」
本当に行く気?と指差すのは女性物の下着売り場。
「他の客はいないようだし、構わんだろ」
「私が構うわ」

その、サイズとか、と目線を彷徨わせると、ふっと手が離れて耳元に近づく口元。微かな吐息と共に放たれた単語にバッと離れようとしたら、腰を抱かれた。
「🌸の下着のサイズくらい把握してる」
洗濯したし、と言う横顔に、あの時かっ!と戦慄く。

「ひとつかふたつ、サイズ上げていいと思うぞ」
跡がついてた、と腰を抱いている手先がつう、と脇のまさに下着のラインを撫でる。
「カップからも軽く溢れてたし」
その言葉に、カッと顔が熱くなる。

「あ、あの、もう少し、恥じらい持ちません?」
「30の男が下着一つで顔色変えるのもおかしいだろ」
言われてみれば、と見上げる。
「いやっ!おかしいって。少なくとも下着のサイズを把握されるのは恥ずかしいって」
わかったわかった、と言いながら腰を引き寄せてくる。

「サイズの合わない下着を長く使うと、姿勢悪くなるぞ」
とりあえず測ってみろ、と言われ、店員さんに声をかけた。

  ✜

「はぁ」カシャン、とハンガーをフックに戻す。
(なんの特殊能力?)
店員におすすめされたのは、カップを1つ上げること。
この際、イメージと違うような、こう、フリフリなラブリーなのでも選んでやろうかと思いながら、手に取るのは赤、黒、紺。
「いや、断じて赤は買わんぞ」
今日は、とつぶやく。
(あ、かわいい)
サイズあるなぁ、と手に取った赤のセットアップにハッ、とする。フックに戻そうとしたそれを取り上げる浅灼けた手。

「赤か紺なら赤にしろ」
流石に計測の時は離れていたシャンクスが隣りにいた。
「ネイビーがいい」「赤」
こだわるなぁ、と仕方なく折れた。

お包みしますね、と可愛らしいお姉さんが微笑む。
「お支払いは?」
カードで、と財布から取り出したそれより早く、タッチ決済機に翳される光沢のある黒。
待って、と言った時にはもうレシートが発行されていた。
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