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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第42章 1,380円の恩義


駐車場はだいぶ埋まっていて、車体の大きい車を駐められる場所が空いているだろうかと不安になったが、運転席の彼は迷いなく車を走らせている。
いくつかの区画に分けられた駐車場。ゲートからは少し奥まったところにある「西」と書かれたフロアは平面駐車場だった。

「東、南、北は入店口の近くに人が集まりやすい店が多い。西だけ、旅行会社やクリーニングなんかの混雑しづらい店が近いから空きができやすいんだ」
事前にネットでフロアガイドを確認して目星つけとくと駐車枠探しの手間が省ける、と入り口から近い一枠でエンジンを切った彼に感心する。
すぐに降りず、携帯を取り出すとフロアガイドを表示する。

「調理用品は、2階。ドラッグストアは1階...下着は3階。買うものの重さから考えて上から下だな」
瞬時に無駄のないルートを割り出す横顔を眺めていたら、目線が合う。

「なんだ?見つめるほどいい男か?」
ちょっと戯けてみせたシャンクスにクスリと笑う。立体駐車場を避けてくれた気遣いも含め、愛されてるな、なんて思う。
「そうね、キスしたい程度には」
少し甘えを見せたら、幾度か瞬きをして、携帯を上着のポケットにしまう。

「🌸からは、してくれないのか」
キス、と左手で右頬を撫で、程よく塗られたグロスの艶に熱視線。
「届かないんだもん」「今は、届くだろ?」
うん、と近距離の唇に自身のそれを重ねる。

指先で頬を撫でる右腕をぎゅと掴む手を取られて、指が絡む。

閉じた目の奥が熱いのは、悲しい、とかじゃなかった。
そのキスから感じる想いが、痛い。
濡れた感触に唇を開くと、深く口付けられる。

絡まる舌に、溢れそうになる唾液を飲み込む。
それが行き着く先は、胸の奥のキズ跡。
染み込んでいくような暖かさに、幸福を感じる。
それを感じるだけ、自分の中に広がっていく優しさが愛おしい。

微かに唇に触れた吐息が熱い。
じっと見つめられる目線が痛くて、震えた。
うまく目を合わせられずに俯いていると、大きな手で前髪を払った額にキス。
コツリ、とそこを突き合わせると、温もりと優しい瞳に微笑んだ。
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