依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第40章 酒の酔い本性忘れず
いつかと同じように、ソファに座ったシャンクスの髪に🌸が櫛を通す。
「シャンクスの髪は、綺麗ね」
「そうか?癖毛なのは昔からだが」
毛先を掬うと確かに柔らかい。
「癖直ししてる?」
「...毎回適当に頼むから知らん」
ええ、と驚くと、あっけらかんと笑う。
「部下に手先が器用な奴がいてな。適当に切ってもらってる」
「美容室行かないの?」
面倒くさい、と言う顔に本当に執着がないんだな、と驚く。
「せっかく綺麗なのに」
カチ、とドライヤーのスイッチを入れて温度を確かめると、首元に当てる。
「🌸の髪のほうが綺麗だ」
サラサラ、と見上げて、さっき彼が乾かした髪をすくい上げる。
「前向いて、乾かせない」
ほら、と前を向かせて首元に温風をあてる。
「熱くない?」「ん、」
下から風を向けると、フワ、と柔らかい髪が舞い上がり、石鹸のいい香りがする。
「シャンクスから石鹸の香りがするのは、なんか変な感じ」
気持ちよさそうに閉じた目が笑う。
「海の匂いの印象が強いから」
「あー、香水か?」そう、と風を当てながら櫛を内側から通して、髪の流れを整える。
「あの塩辛い感じの匂いは、すっかり『シャンクスの香り』って覚えちゃった」
「なら、🌸は藤の香りだな」
スイッチの切れたドライヤーを取り上げて、スッ、と取った手に鼻先を擦り寄せる。
「...違う」
不機嫌な顔になったシャンクスに、クスクスと笑う。
「香水、振ってないもん」「持ち歩いてないのか」
ないよ、と言うと、あからさまにがっかりした顔で手に頬を擦り寄せた。
「🌸の匂いが何もしねぇ」「香水、持ち歩くようにするね」
ん、と頷いたシャンクスの拗ねた横顔にキスをする。
「...出るか」
少し、機嫌が直ったように見える横顔に頷く。
「モールに香水売ってるところあるかな」
「なかったら、アトマイザー買えばいい」
欲しいの?と顔を覗き込んだら、フイ、と逸らされたブルー・グレイの瞳。
一度、下の執務室に寄ると言う。
「土曜日だからほとんど人はいないと思うが、先に車に行っててもいいぞ」
チャリ、と差し出されるカーキー。
「車にひとりでいるの、少し怖いからついていっていい?」
入り口で待ってるから、と見上げる頭を撫でる。
擽ったいよ、と笑う頬に一つキスをすると、だめ、と押し返す小さい手をギュッと握った。
