依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第40章 酒の酔い本性忘れず
(本当に何も覚えてないのか)
ベッドで少し話してみたが、シャクヤクに行った事どころか、バギーや元彼とのこと、過呼吸を起こした事、ペンの事も一切覚えていないようだった。
🌸は、帰りの車の中で寝てしまったことになっていた。
ベッドに腰掛け、スマホ画面の検索結果に目を走らせる。
『自己防衛反応による記憶の喪失』
(...これか?)
回避できなかった危機を忘れることで自身を守っているのだろうか。その危険を察した時に過呼吸や突然睡眠の症状が出る。
あの時のように。
(辻褄は合う気がする...)
廊下で苦しんで倒れていた🌸の姿が脳裏に過り、ギュッとスマホを握りしめた。
「シャンクスさん?」
お風呂溜まったよ?と開けっぱなしだった寝室の扉から顔を覗かせる🌸。
「🌸、先に入るか?」「あ、えっと忙しい?」
何が、と言いかけて、見やった🌸が何やら落ち着かない。すす、と部屋に入って隣に腰掛けると、そっと腕を掴まれる。
「そ、の...一緒、に、入らないのかなぁ、なんて」
嫌ならいいの!と早口に言う。
「いいのか?」
コクコクと頷く頭を、手にしていたスマホをベッドに放って抱き寄せる。
「🌸は可愛いな」「な、なにを突然、」
いつも思ってる、と頭を撫でる。
くしゅ、とシャツの裾を握る小さい手。
(そうか。第三者がいなければ甘えてくれるのか)
感覚が掴めてきた、とその手を取って白い甲にキスをすると、擽ったそうに身をよじる。
✜
「あ、着替えどうしよう」
脚の間で膝を抱えて湯に浸かる🌸。ゆっくりと肩を引いて上体を凭れさせると素直に寄りかかってきた。
「出掛ける前に部屋に寄るか?」
「...甘えてもいい?」ああ、と頷くと、ありがとう、と柔らかく笑って見上げる。唇に掛かるひと束の髪を払ってキスをする。
「ん、」
上唇と下唇が逆に重なる。
反った白い首筋を撫でると、ピクッと下がった顎を捕まえて振り向かせる。コツ、と額を突き合わせて覗き込む。
「🌸、」「なぁに?」
もう一度接吻ける。
「あ、『さん』付けしたから?」「うん?」
キス、と呟く🌸に、すっかり忘れていたペナルティを思い出す。
「ありゃ、もう無効でいいだろ」
いつでもできるし、と🌸の耳を軽く噛んだ。