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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第39章 過去を知る人


ああ!と声を上げた🌸。
なんだ、と目線を向けると、切なげに見上げてくる潤んだ瞳に、う、とひと息詰まる。
「大事に飲んでたのに...最後のゆず酒、私の」
空になったグラスを見て、キッとそれを持つシャンクスを睨んだ。アルコールで上がった体温と酒を取られた悔しさで震えている。

(バカっ、そんな顔で見るなっ)
ぺたりと座っている🌸の目線は、隣のシャンクスからは少し見下ろす位置にある。そこから潤んだ目で見上げられると、ちょっとクるものがある。
「悪かった。けど、今日はもう飲み過ぎだ」
また今度、と慰めに頭を撫でてやる。ゆっくりと瞳が伏せられ、体の力が抜けた様子の🌸が再び揺れ始める。

「寝るな、寝るな!」
せめてタクシーに乗るまで頑張れ、と軽く肩を揺する。
微笑んで見ていたシャクヤクが、タクシー呼ぶ?と言ってくれた申し出に甘え、卓に置かれていた🌸の携帯をバッグに入れた。


「お前ぇが女の世話をするとはなぁ。
しかもこんな小娘の」
クツクツと笑うバギーに、ホントだよ、と苦笑いを返す。
「なぁんか、構ってほしくなんだよな」
「あーはいはい。ごちそーさまデース」
早く帰りやがれ、とやけ酒のようにビールを煽るバギー。

靴を履いて立ち上がる直前に、あ、と思い出して振り返る。
「バギー、ここで見聞きしたこと、一切他言無用で頼む」
「ああ?なんだそりゃあ」
コクコクと船を漕いでいる🌸に目線を寄越して、再び、頼む、と願う。
しばらく見上げてきて、チラ、と🌸を見やったバギーが、わぁったよ、と投槍に言って畳に手をついた。

「タダでってわけにゃあいくめぇよ」
なぁ?とニヤリ、笑うバギー。
「言い値で聞いてやるよ」
「そうこねぇと」
卓に戻ってビールを飲み干すと、来週以降連絡入れらぁ、と少し赤らんだ顔で手を振る。
いつの間にか表に出ていたシャクヤクが、入り口から顔を出して、タクシー来てるわ、と微笑む。

「取引成立だな」
よっ、と酒の入った体でも容易く持ち上がる体を抱き上げる。

🌸をタクシーに乗せて、会計を済ませると、私もよね?とシー、と人差し指を立てるシャクヤクに、お願いします、と軽く頭を下げて暖簾が仕舞われた引き戸を抜けて、すやすやと眠る🌸の隣に乗り込んだ。
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