依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第39章 過去を知る人
いつもの雰囲気に戻ったシャンクスの横顔にホッとする。
畳に突いている手に指先で触れると、ゆっくりと指先を絡め取られる。
チラ、と目線を動かしたバギーがハァ、と溜息をつく。
「嬢ちゃん、悪い事ぁ言わねぇ。
見切りつけるなら早いほうがいいぞ。
そいつぁ案外ねちっこくて一回手に取ったら意地でも離さねぇガキみたいな男だ。
捕まっちまったら面倒になるぞ」
「褒めるな、バギー」
照れるじゃねぇか、と悪ノリするシャンクスに、褒めちゃいねぇ!と悪態で返す。
「あー、割とすでに手遅れかと...」
ふふ、と笑ってグラスに口をつける🌸。
え、とシャンクスが目線を寄越す。
カウンターに頬杖をついてにこやかに見守っていたシャクヤクも、あら、と背を伸ばす。
ヘラ、と笑って柚子酒を飲んだ🌸に、言うねぇ、とニヤついたバギーはチラ、とシャンクスに目をやった。
「なかなか手強そうな嬢ちゃんだと思ってたが、案外ベッタリなのはシャンクスより嬢ちゃんの方か?」
彼女を見つめて拳を震え握るシャンクスを見て、へえ、と酒を煽った。
✜
手遅れ、と言った🌸の横顔を盗み見る。
自分が仕掛ければ好意を示してはくれていたが、🌸が自らはっきりとその類の言葉を言った事が嬉しくて、抱き寄せようとした手をぐっと堪えた。
(バギーやシャクヤクさんがいる手前では嫌がるか)
少しずつ把握できてきた🌸のボーダーラインを見極める。バギーもシャクヤクも、🌸の中で信用寄りの人間であるのは確かだが、どの程度なのかまでは読み取れていない。
確認のために、絡めた手を少し強く握ると握り返してくれる。
ひと口ゆず酒を飲んで、ほぅ、と息をついた🌸の体が少し揺れる。潤んでいる瞳がゆっくりと瞬きをした。
いくらか酒が入って眠いのだろう。
手元の酒を飲み干すと、もう一度、強く手を握って離す。
「さて、そろそろ帰るか」
「ああ?まだいいだろ。」
うつらうつらし始めていた🌸が、バギーの声に、はいっ!と大きく返事をする。
「あ、ダメだなこりゃ」
「弱いんだよなぁ」
弱すぎんだろ、とケタケタ笑うバギーに飲みやすさでペースが早く見えたのは気のせいではなかった、と🌸の手元のロックグラスに半分ほど残ったゆず酒を一気に飲み干す。