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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第39章 過去を知る人


シャンクスから、ここに🌸が来ていることを他言しないでほしいと言われたシャクヤクは、いいわよ、と笑顔で承った。
「さっきの彼、出禁にしとく?」
頼む、とシャンクスが口にするより早く、そこまでしなくていい、と首を振った。
「スモーカーさんが『芍薬』を気に入ったのなら、来店を制限する権限は私にないですから」
機嫌悪そうに座敷の柱に寄りかかったシャンクスを見て、シャクヤクは、優しいのね、とほほえんだ。
「自分のためなので、優しさじゃないです」
「甘いだけだ」
キッパリと冷たく言い放った声に、ん、と口をつぐむ。
「赤髪くん、」
シャクヤクの声を無視したシャンクスは、柱の根元に座り込み、酒を煽った。
「そうやって自分のためだと、権限がないだと言いながら、自分が望むことで誰かが傷ついたり不利益を被ることになるのが怖いだけだろ」
睨むような視線に、🌸も負けじと見つめ返す。
「怖くなんかない。ただ...」
「ただ、なんだ?」
じっと揺るがない瞳に目を逸らすと、ため息とともに卓に猪口を置く。
「俺との関係を言いたくないのも、過去に囚われてビビってるだけだろう」
ハッと顔を上げた🌸。

「俺は、周りが見えなくなってお前を守れなかったガキとは違う」
再び重なる視線を逃さまいと、強く絡め取る。
「お前の扱いに悩んで、手放すことを選んだやつとも違う。いつまでそうやって過去の男を通して俺を見るんだ」

はっと目を見開いた🌸。
無意識なのはわかっていた。
わかっていたとはいえ、目の前で肯定されると応えるものがある。

深くため息を吐き、俯く🌸に、煙草吸ってくる、と言って振り返らずに店先に出た。

冷えた夜風が少し湿って感じる。
「きっついなぁ」
キリキリと痛む胸に、すぅっ、と深く紫煙を吸う。

🌸の中に自分の存在を置くだけで必死だった。
居場所があると知り、安心した後にせり上がるのは、自分をひた隠しにしたがる彼女への不満。
すでに去った所有者がいるという嫉妬。
そしてその者への信用に腹が立った。
身勝手に傷つけてしまった、と溜息をついて、夜空を見上げる。

「うげぇ!」
なんちゅう声だ、と横を向くと、先日ぶりの昔馴染み。

くるり、身を返した背中に駆け寄って襟首を掴むと、離せっコラァ!と喚く声を無視し、店内へ引きずり込んだ。
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