依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第39章 過去を知る人
微かな光を灯す灯籠。
内側から開いた引き戸からスーツの男性が4人ほど出てくる。
「ご馳走様」
「また来るね」
「ハァイ。金払いのいい客はいつでも歓迎よ」
厳しー!と笑いながら手を振った客を、にこやかに見送っている。
「あら、いらっしゃい」
中に戻る手前、こちらに気づいて笑いかけるシャクヤク。
店内から、喧しくないが賑やかな声が聞こえている。
「埋まってるなら、出直すが」
「大丈夫よぉ。座敷でいい?」
カウンター、埋まってるのと笑う。
「こんばんは、🌸ちゃん」
「こんばんは、シャクヤクさん」
シャクヤクに続いて店内に入る。
「すいませーん!」
「はぁい」
客に呼ばれてカウンター内へ戻ったシャクヤク。
シャンクスに勧められた座敷の奥に入る。
✜
他愛もないことを話しながら、🌸はゆず酒、シャンクスは清酒を飲んでいた。
視界は隔離されているが、障子の向こうの様子は声や物音から微かに読み取れる。2,3 度、客が入れ替わったようだ。
テーブルの食器を簡単に片付ける🌸。
むやみに重ねず、大きさや形ごとに引きやすいようテーブルの手前に並べていく。
「🌸は、飲食店で働い経験があるのか」
手付きが慣れているように見えた。
「無いよ。そもそもアルバイトしたことない」
高校出てすぐ公務員だもん、と微かに桜色がさす頬を緩める。
珍しいな、と、高校入学以降アルバイトに明け暮れていた時期があるシャンクスは、目を丸くした。
「アルバイト、憧れたなぁ。
ファストフード店とかショップの店員さんとか」
公務員試験と定期試験の勉強でやらずじまい、と言って片付けたテーブルに腕を置く。
「シャンクスは?アルバイトしてた?」
「バイトしかしてなかった」
ふと笑うと、なんか想像つく、と🌸も笑った。
「どんなアルバイト?」
色々、と猪口の酒を飲み干す。
「工事現場、施設警備、引越し業者...
大学には寝に行ってるようなもんだった。
講義中も、計画書書いてたり」
「計画書?」
「『REDForce』立ち上げたのは、在学中だったからな」
学生で会社作っちゃったの?と驚いている。
当時の失敗話に笑い、仲間と対立した話を真面目な顔で聞いている🌸に、少し張っていた気が緩んだ。