依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第38章 優しい眼差しのその先に
赤の背景に[STANDBY]と表示された画面。
右端のバナーに「アカウント:s_Red_F00」と表示されている下のコメント欄に「@Shanks-0309-RFさんが退室しました」の一文が表示される。
なるほど。リモート会議などに使うビデオアプリを利用して、離れても様子がわかるようにしていたらしい。
「ハイテクだぁ」
ベビーモニター的なことだろうか、と思うとちょっと複雑だった。恋人が寝ている間に煙草を買いに行くだけなのに。ここまでするか?と思いつつ、心配のもとになる愛情も感じられて少し、擽ったい。
ガチャ、と玄関扉の鍵が開く音がした。鉄の扉が閉まる音のあとに内鍵をかける音。ここはオートロック機能がなく、まだ彼に合鍵は渡していない。
「悪い、鞄から勝手に借りた」
チャリ、と指先から掌に落とされるシリンダー錠。受ける視線に顔を上げる。
「どうしたの?」
「...元気なら、良かった。疲れている様だったから」
「ごめんね、せっかくお迎え来てくれたのに、車で寝ちゃって」
偶にあるんだよねぇ、と室内へ戻ろうとする腕を掴まれる。
「...無理、してないな?」
少し怖い顔で目線を下げるシャンクス。
「言ったでしょ?偶にあるって。ちょっと疲れたり緊張したりしたあと、コテンと寝ちゃうときがあるんだ」
なんて言ったかな、と呟く🌸にテーブルの脇に倒れていた真っ青な顔色は影もなく、いつもの🌸だ。
「旅行があったり、連休明けで仕事詰まってたり、人事契約の件があったりで今週仕事詰まってたんだよね」
そのせいよ、と見上げて笑う。
ゆっくりと小さい体に腕を回し、心配した、と抱きすくめる。
「...全く起きねぇから、体調、悪いのかと」
「車の揺れの心地よさもあるかな」
少し照れて笑って、ポンポン、と背中を叩く。
「土曜日のデートが楽しみで、ドキドキしてたし」
なんてね、と少し舌を出す🌸。
とっくに白紙だと思っていた予定に、いいのか、と呟く。
「え、あれ?行かないの?もしかして、お仕事?」
私、リスケの連絡忘れてる?と悩み出す🌸。
「🌸の体調次第では、」
「大丈夫だよ!」
楽しみだったんだよ?と笑う頬を掌で包み込む。
「芍薬行くか。」「はーい!」
着替えるね、と言う🌸に頷いて、起動しているアプリをシャットダウンした。