依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第38章 優しい眼差しのその先に
ぱち、と目を開けると暗闇だった。
(あれ?)
くるり、と目を回して、自室の寝台に寝ている事に気づく。パチパチと瞬きをすると、何故かまつげが乾いて張り付いた。
(なんか、夢でも見たのかな)
ムクリと起き上がって目を擦る。いつもの寝室。ふあ、とあくびをして起き上がると、電気のついていない寝室に微かな光。
(なに、あれ)
書物が並ぶ棚にゆらゆらと近づいて、それに手を伸ばす。
カタ、と持ち上げる。
薄く、両手になんとか乗る大きさ。
くるりと反転させると、液晶が眩しい。
四角く切り取られた画面の中は一面、闇。
かすかに画角の外から光が指していて、僅かに深い赤が見える。
画角が変わるわけでもないのに、タブレットの向きを変えたりしてみる。
微動だにしない画面。いや、バイクか自転車のライトらしきものが遠くを通り過ぎた。
目を凝らすと、画面の中の状況がわかった。
カメラは、どうやら車のダッシュボード辺りに置かれているようだ。
ハンドルになにか覆い被さっていて、一見、運転席も助手席も無人に見える。二席の隙間から後部座席の中央。リアガラスの向こうに外観が見える。
運転席の質感や雰囲気に覚えがある。
「シャンクスさん?」
そう、記憶にある、彼の愛車の中によく似ている。
暗くて、乗っている人物まではわからない。
変化のない画面。
少しマイク部分に近づいて、もう一度声をかける。
「シャンクスさーん」
画面の中に突然現れるシルエット。
-🌸、-
画面の中で、起きてたのか?と微かに笑う。
「もしかして私、帰りの車の中で寝ちゃった?」
幾度か経験のある突然睡眠の症状が出たのだろうか、と彼に問いかける。覚えてないのか?と優しい声でハンドルに腕で凭れる。
-晩飯どうしようかって話ながら走ってたら、コテッと寝ちまったから🌸の部屋に帰ったんだ。悪い、煙草買いに出てた。すぐ戻る-
なにか欲しい物あるか?と聞かれて、うーん、と考える。
「お腹、空いちゃったかな」
-ああ、芍薬、行くか?-
「行きたい!ゆず酒!」
すぐ戻る、と画角の中で少し翳った姿。
早く戻ってきてね、と我儘を言ったら、ダッシュで戻ってやる、とニッと笑った。