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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第36章 謝罪の抱擁を


笑顔で手を振る彼に、まともに返事もできずに玄関に立ちすくむ。

  ごめん

微かに聞こえた声に、部屋へと駆け上がる。

「うっ、」
ポタポタ、とローテーブルに落ちた雫。


 ほら、あの子。  えー、普通

       真面目そうな顔してさぁ

 また一緒にいる  やだー

彼も、シャンクスと同じ赤い髪だった。
もっと明るく、激しい赤。
逆立てた髪で、不敵に笑う顔。

テーブルのティッシュを多めに取って、顔を押し当てる。
「んっくぅ」
嗚咽が抑えきれずに、蹲る。


     他にも男いるんだよ

       ああいう派手なのが好きなんだ

   意外だよな  唆したんだよ

違う、ちがう違う!
ハッハッ、と浅くなる息。ボロボロと涙が溢れる。

 息すんなっ!止めるんだ

まだ少し冷静な頭が、前に悪友が教えてくれた対処法を思い出す。

 ゆっくり吐け。吸わなくていい、吐くだけだ

ふー、と震える息を出す。それでも、ヒュー、ヒュー、と早くなる呼吸。
ズル、と額をつけていたローテーブルから落ちて横になる。真っ暗でしんとした部屋に続く呼吸音。ゆっくり目を閉じる。

真っ先に思い出すのは、落ち着いた深い赤色。
少し浅灼けした肌に、コーヒーと煙草の混じった海の匂い。

つ、と眉間に雫が垂れた。

🌸と呼ぶ優しい声。
「うまい」と口いっぱいに頬張って笑うブルー・グレイの瞳。
よしよし、と撫でる温かい左手。
ん?と少し目線を寄越す、ハンドルを握る横顔。
子どもみたいな甘え方。
不意打ちされるキスの直前の男らしい顔。

冷えた体温が、少し戻る。
それでも、ヒュー、と掠れた息が喉を過ぎていく。

  -愛してる-  -好きだっつってんだ-

        - 身の程知らず -

「ぁっかは、」

  苦しい くるしい 吐くだけ、吐くだけ

ヒュッヒュッと繰り返される息を吸う音。
息苦しさであふれる涙。瞬きもできずにぼやけていく視界の端で、一瞬だけ見えた光の奥の方で揺らいだのは、赤
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