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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第35章 巡り渡る


机に伏せ置かれた携帯。
ワインレッドの万年筆を指先で器用に回している。

少し会話をして電話を切ったバギーは、🌸、だったな、と声を掛け、まあ、ちょっと話そうぜ、と退室しかけていたのを呼び寄せた。

「ふーん、へぇ」
ニヤニヤしながら頬杖をついている。少し腕を伸ばしてコト、と置かれた万年筆。
「コレの持ち主はよぉ、いけすかねぇ派手ガキ野郎でなぁ...」
指先で突いて揺らす。徐ろにペンを手に、ゆっくりとした彼の動きを追う。窓の方へ向かうと、ガラッと開けてその先に指先で摘んで垂らす。
(まさか、落とすつもりっ⁉)
安易に処分していいものじゃないのはわかっている。それ自体の価値も安いものではなさそうだし、彼の愛用品だ。

ニヤニヤしている彼と向き合いながら、指先のペンが気になる。フッ、と手から離れる直前のそれに、手元のお盆を強く握った。


「......っぶっはははははっ!ひゃー!」
腹を抱えて転げ回るバギーに、ビクッと一歩下がる。
「うはははっ、へーっへっへっへっ」
泣き笑う彼にちょっと顔が引き攣る。
「素直なやつは嫌いじゃないぜぇ」
ほらよ、と投げられたそれを慌てて受け取る。
「へぇ。アイツも趣味が変わったなぁ」
椅子に掛け直し、頭から足先まで視線を這わせる。

「あんた、それの持ち主とどんな関係なんだ?」
椅子に腰掛け、頬杖をつくバギーの表情に彼が掠める。
「...存じ上げません」「ほぉ?」
存じ上げないのか、と誂ったような口調で言う。
「本当に、知らないのか?持ち主」
ニタァ、と笑うバギー。
彼はこうなるのをわかってペンを忍ばせたのだ。
ガキの大人二人に完全に誂われている。

「プライベートなことなので、答えかねます」
「なるほどなるほど。業務内で知り合ったわけじゃなく、完全に『個人的なお知り合い』なんだな」
わかった、と変わらずニヤニヤしている。
(墓穴だったかな、)

「あんた、いくつだ?」「...23です」
7つ下かぁ、と窓の外を見る。
「あいつ、ガキ過ぎて呆れるだろ」
「そっくりそのままお返しします」
彼と同じイタズラ好きのようなので、ちょっと強気で言い返すと、言うねぇ、とチラリ、目線を寄越してきた。
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