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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第35章 巡り渡る


執務室前のインターホンが鳴って席を立つ。
そこには、真っ青な髪と赤い鼻。

「14時に約束した『BTBデリバリー』のバギーだ」
少々お待ちください、と簡易応接用のソファを勧める。

会議室予約を確認し、内線をかける。
「総務課🌸です。BTBデリバリーの方がお見えになりました。応接室にご案内します」
すぐに向かう、という対応者に、お願いします、と電話を切る。お茶を用意して入り口に戻ると、派手な見た目とは裏腹に礼儀正しく背筋を伸ばして座っている。
「お待たせいたしました。応接室までご案内いたします」こちらです、と歩き出した。

どうぞ、と応接室の上座を勧める。
「担当者が参りますので、しばらくお待ち下さい」
「どうも」
彼の右脇にお茶を置いて退室しようとすると、あん?と言うバギーの声。
「いかがなさいましたか?」
「あ?ああ、前の訪問先から間違えて持ってきちまったものがあっただけだ」
めんどくせぇ、と鞄から取り出されたのは一本の万年筆。
ワインレッドに金の装飾が入ったそれに、彼を思い出す。

「左様でしたか」「あのヤローのだな」
携帯を取りだして連絡を取るようなので、退室する。
「てめぇのペン、鞄に入ってたんだが捨てていいか?」
(捨てるのっ⁉)
明らかにまだ使えるであろう上に高級感のあるそれを、容易く捨てると言ったバギーに驚いて固まる。

「REDforceに戻れってか?派手にめんどくせぇ!あん?ああ、は?女?」
聞き覚えのある単語とこちらを向いたバギーの目にビクッと固まる。

「ああ、は?藤の匂いなんかわかるか...ちょっと待て」
携帯から耳を離すと、ちょっと聞くが、と声を掛けられた。

「な、んで、しょうか?」
聞き慣れた単語が聞こえて、苦笑気味に向き直る。

チラ、と下がった目線。
さり気なく、抱えていたお盆でネームプレートを隠す。
バギーが目線を向けたまま、携帯に耳を当てる。

「160無いくらいの黒髪の女か?」
(なんでっ、?)
「お前が言うまんまの背格好の女なら眼の前にいる」
(何考えてんのっ!?)
何をさせる気だ、あの人!と冷や汗が流れる。
バギーが手に持つペンに、記憶が蘇る。
(まさかっ)
悪戯好きの笑顔が脳裏によぎった。
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