依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第34章 影だけを追う
ガー、と音を立てて紙を吐き出す複合機を、赤で彩った爪先でつつく。
「...ル」
(妹?でも、シャンクスに「家族」はいないはず)
「...!」
(助手席の女が彼女?社内の人間じゃない...?)
「セシル!」「えっ、は、はいっ」
驚いて振り向くと、どうした?と怪訝そうな上司。
「いかがなさいましたか?ヤソップ部長」
「『いかがないましたか?』じゃない。来客だ」
ん、と顎で示された先を見ると、来客口に赤い髪の後ろ姿と向き合う派手なメイクの青い髪。
気づかなかった自分を棚に上げて、アメリはなにをしているだ、と彼女の席を振り返ったがいない。5分ほど前にラッキー・ルウの補助で外出したのを思い出した。
「申し訳ありません。すぐにお茶を」「頼んだ」
自席に戻るヤソップ。書類を一旦机に置き、給湯室で二つ、お茶を淹れると応接セットで向かい合う二人へと出す。
「どうぞ」「お、ありがとな。ねえちゃん」
「社長も、」「ああ、置いといてくれ」
深く腰掛けて一口呑んだバギーに対し、シャンクスはソファに浅く腰掛けて、両膝に両肘を乗せている。
「来季の契約のことだがなぁ」
おもむろに鞄から書類を取り出したバギー。
「こっちは継続で構わん」
「てめぇが構わんでもこっちが構うんだ、派手バカヤロー」
バギーはシャンクスと同級生でなおかつ幼馴染。
人材派遣会社である彼の会社と契約に至ったのはなんとも偶然で、部下から『REDforce』へ売り込みに行ったと聞いたバギーが直接シャンクスに連絡してきた。
-人が足りねぇならうちから出してやってもいいぞ。いいのがそろってる。あの、できれば契約してください。契約先の拡充が頭打ちしてて...通年契約してもらえると助かるんで。幼馴染の好で...契約金に関しては要相談-
お互い良いところで話が纏まり、今では社内の契約社員の殆どは『BTBデリバリー』からの人材だ。
「じゃあそれで書類を纏める。出来次第、データと紙で送り付けてやらぁ」
少し冷めたお茶を飲み干して立ち上がるバギー。
「全く忙しいぜ。この後はモビーディック市の社教センターまで行かなきゃならねぇ」
あーめんどくさい、と言いながら嬉しそうにする。
「総務課か?」
「?ああ、長付きとの打ち合わせだが」
そうか、と目線を外に投げたシャンクス。
何だよ、というバギーへ、別に、といつもの笑顔を見せた。
