依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第33章 明かされた秘密
「ん、だいたい乾いたろう」
耳の後ろでブオーッと音を立てて鳴っていたドライヤーが止まる。
「ありがとう。じゃあ、次シャンクスが座って」
「ざっくり乾きゃいい」
ほとんど乾いてるし、と髪を乱す長躯をソファに座らせ、彼の手から奪ったそれを中程の風の強さにして、優しく髪を梳く。
「風量強くないですかー?」「大丈夫デース」
美容師ごっこ、と楽しそうに笑う顔を見下ろしてクスリと笑う。
「懐かしいなぁ、子供の頃、ルージュさんにこうやって乾かしてもらったな」
「ルージュさん?」
「船長の奥さん。運営の責任者の船長を支えて、俺たちの面倒を見てくれた人」
施設で育った、って話はしたな、と遠くを見つめるブルー・グレイが揺らぐ。
「気が強い姐さんで、俺たちと一緒になって遊びだす船長を、げんこつ落として事務室に引きずり帰っていくような人だった。船長のことをすごく愛してて、体が弱かったけどいつも笑っていた」
懐かしー、と少し寂しそうに笑う。
「シャンクスのこと、ちゃんと知りたいって思うんだけど、そのへんの話は聞かれると嫌?」
櫛を通しながらあまり重くならない声で聞く。
「いいや。まぁ、俺自身に記憶がないし、レイさんや船長...あ、本当は『施設長』なんだが、ハウス...育った施設が船を改装した建物だったから、みんな『船長』って呼ぶんだ」
それで、と目を閉じる。
「預けられたのは赤ん坊の頃。施設の敷地に置かれていたらしい。だから、船長もレイさんも誰が俺を預けたのかは知らない」
もちろん、俺も。と目を開ける。
「ハウスには、子供も大人もたくさんいた。幹部、運営をしていた人たちを親や兄姉のように慕っていたし、喧嘩ばっかしてた同級生もいた」
バギー、元気なのかな?と少し笑った横顔が穏やかで、🌸が隣に腰掛けると、片腕で抱き寄せて、コテ、と肩にこめかみを当てた。
「15で施設を出て、学生とバイトしながら今の会社を立ち上げたのが24の時。設立当時はレイさんも色々助けてくれて...」
一瞬、シャンクスの瞳が昏くなったのをしっかりと見た。
「ま、色々あって、ベックやヤソップ...今のREDForceの幹部の奴らと出会って、経営の方が忙しくなってほとんど大学に行かなくなったから辞めた」
あと半年で卒業だったんだけどな、と笑う横顔に、気になってることはちゃんと聞こう、と改めて向き直った。
