依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第32章 終わった恋のこと❦
ソファに腰掛け直した彼の足を跨いで膝に乗ると、両手を輪郭に添えて少し、引き寄せる。素直に上を向いて浮き出た首筋を、指先でそっと撫でる。
ほんの少し触れた舌先を吸い上げると、背筋を伸ばして熱い舌が口内で蠢く。
ス、と腰から背中に弱い力で逆撫でされて、ビクッと身体が跳ねる。
「敏感だなぁ」「う、うるさいっ」
互いの舌先を繋ぐ銀糸を、唇を舐めて切られる。
「イチからって、何から話したらいい?」
ペタリ、と腰を下ろして腿に座り、首裏で手を組む。
抱き寄せられて、肩口に額を当てる。
「出会いは?」「職場。センターの警備員さん」
警察が警備員?と首を傾げる。
「ちょっと素行が悪くて、本部から追い出されたんだって言ってた」
素行の悪い警察、と🌸の艷やかな髪を指に絡める。
「切符切られたことに腹立てて騒ぐ市民を殴っちゃったんだって。それも、警察本部のロビーで」
「そ、れは...ダメだな」
どんな警察官だ、と苦笑いする。
「それまでにも、そういう態度が原因で所属が転々としてたらしくて、組織犯罪対策部ではおとり捜査や裏取りにイライラして詐欺組織の根城に乗り込もうとしたり、交通局では違反者と揉めたり、麻薬取締部ではクスリが許せないって密売人締め上げて窒息死させかけたり、刑事課では土壇場で逃げ出そうとした捕縛者に対して許可前に発砲したりで...」
「そいつ、取り締まられる側じゃないか?」
免職されておかしくない素行に、なおさら🌸との繋がりが見いだせない。
「当時の上部が手に負えないって、素行不良で免職になるところを同期とか恩師が掛け合ってくれて、警察武術の玄人だったことから、警備職に異動することで落ち着いたの。それで配属されたのが社教センターの警備室」
まあ、元同僚っちゃ元同僚??と首を傾げる。
「一年、勤務して本部に帰ってからも関係は少し続いたけど、彼が新設された部署を任されたから多忙極めて、あとは前に話したとおり」
それで終わったの、と言う🌸に、忌み合って別れたわけではなく、むしろ曖昧な別れ方になんとも言えない不完全燃焼を覚えた。
「機嫌、治った?」
「機嫌が悪かったわけじゃ無い」
へそ曲げてたくせに、と言う🌸を横抱きにすると、リビングのドアの前で立ち止まり、開けろ、と顎で指した。