依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第32章 終わった恋のこと❦
「で、イチから話してもらうか」
差し出した空の食器を受け取った🌸は、カウンター越しに瞬きした。カウンターに飲み干した白ワインのグラスを置いて、手をつく。
食事の終わりかけ、「前にカフェで聞いた元カレのこと」と言い出したのに対して「見てたの?」。
やっぱ後でゆっくり聞く、とシャンクスは気持ちの準備のため、少し酒を飲んだ。
「イチからって言われても、結構ほとんど話しちゃったんだけど」
泡立ったスポンジで真新しい4本の箸を擦る🌸。
「今でも関わりがあるのは聞いてない」
「関わり...」
今朝は本当に偶然だし、とありのままを話す。
「別に、何も示し合わせしたわけじゃないよ。
本当に偶然。
図書館で借りた本を返しに来たみたいだった」
それで鉢合わせただけ、と言う顔を眺め、🌸がそう言うなら信じとく、と言ってダイニングを抜け、キッチンに背を向けてリビングのソファに座る。
カチャカチャとなる食器や調理器具を備え付けの食洗機に入れて乾燥モードにする。食洗機非対応の夫婦箸とグラスを干しかごに置く。
溜まったお湯やシンク周りの処理までして、捲くっていた袖を戻し、完全に拗ねている背中に抱きつく。
ソファの背もたれを挟んで、食事前の彼を真似て擦り寄る。
「今からスモーカーさんに電話しようか?」
それで納得できるなら、とカウンターの携帯を見やる。
チラリ、と横目に視線をくれるシャンクスに、するりと腕を解くと、両手首が肩をすぎる前に捉えられて引き戻される。
ボソリと呟かれた、信じる、と言う言葉に、ありがとう、と少し癖を持った柔らかい赤髪に頬擦りする。
「さっきと逆だな」
少し擽ったそうにするシャンクスの赤い髪に、口元を寄せる。
「もっと、🌸からもキスしてほしい」
不安があったせいか、肩にかけた腕を掴み、妙に甘えるシャンクス。
「身長差から言って唇には結構難しいんだけど。立ってるとシャンクスの首筋すら見上げるからね」
そうか、と落ち込む無精髭の伸びた頬に後ろからニ回、キスをした。
背伸びしたった届くかどうか、と少し笑うと、おもむろに立ち上がり、手を引いてソファ前に誘導される。
向き合って抱き寄せられ、少し屈んでからキスをした彼にぐっ、と腰を引き寄せられると、少し浮いた踵に不安定になった体を軽く彼に預けた。