依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第30章 傍観の白煙
自分に警察らしさがあるかと聞かれれば、十人中九人半に「ない」と言われる自負はあるが、部下の連中はまた違う意味で警察らしさがない。
自席に荷物をおいて荒々しく腰掛けると、一人、走り寄ってくる。
「おはようございます!スモーカーさん」
メガネに黒髪の女。
一応、直下の部下のまとめ役だが、ソイツらからは「警部補ちゃん」とふざけた呼び名をされている。
「たしぎ、お前、🌸と最近連絡取ってるか?」
「はい?」
突然出された名前に首を傾げている。
まだ🌸との交際がそれなりに順調だった頃。
初めて直属の部下として配置されたコイツと、一度だけ、🌸との仲を取り持った俺の同期と4人で顔を合わせた。🌸との関係が変わってしまったことは雰囲気で察しているらしく、連絡を取りづらくなってから話題に出さなくなっていた。
「い、いえ。
個人的な連絡先は知らないので、」
突然の質問に困惑している。
「何かあったんですか?」
神妙な顔になるたしぎに首を振る。
「いや、今朝偶然会ってな。
お前が元気か気にしていた」
少しの嘘で誤魔化して、古い機種の携帯を取り出す。
随分連絡を取っていない彼女を探し出し、アカウントが彼女のもので変わりないか確かめ、[今日、暇か?]と送ってから誘う理由を考える。
同期のヒナに連絡を取るか、と、ろくなやり取り履歴のないアカウントを開く。
「そうですか。
久しぶりお会いしたいですね!」
思いついた嘘を誠にしてくれた言葉にちら、と顔を見て、今度、飯でも誘うか、と呟く。
「いいですねぇ!
🌸さん、お元気かなぁ?」
たしぎに、今日暇か?と言いかけたが、珍しく既読後の返信が遅い彼女に、またあとでいいか、とロックをかけたスマホを置いて業務に取り掛かる用意を始めた。