依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第28章 度外視の恋慕
相変わらずデスク上にある紙袋。
執務机についたシャンクスに向かい合うベックマンの背中。
話の合間、シャンクスが開けっ放しのボトルからひと口飲む。
「なんだ、それは?」
仕事を始める時と同じ様に席に付き、意識は二人のやり取りに集中する。
チラ、の横目に見た、背中を向けている彼が指した「それ」を取り寄せる浅灼けた手。
中身が見れるかも、とそれとなく目線を寄越す。
「...女か」
ベックマンの言葉にとうとう我慢がならず、パッと見る。
「あまり『遊び』が過ぎると面倒事になるぞ」
どうせ押し付けられたのだろう、と呆れ声をかけられたシャンクスは、むっとした顔を見せたので驚いた。
「お前が言えた口かっ」
「俺に本命はいない」
スケコマシー、とからかった顔を見せるシャンクス。
遊んだ女に押し付けられたのか、本命から受け取ったのか。
やり取りだけでは分からず、カチカチ、と無駄にマウスを鳴らす。
「毒が盛られてないことを願う」
「どこで手に入れるってんだ」
カサ、と紙袋の口に指を掛けて、もしくは惚れ薬、と言うベックマンに、そんなわけあるか、と笑って取り上げた紙袋を今度は案外真面目な顔をして覗き込む。
不安になってきたのだろうか。
そこに信用があるような仲では無いのか。
多分、彼の口に入ることなく処分させるんだろう、と安息して少し甘くしたコーヒーに口に含んだ時に聞こえた言葉。
飲み下す途中だったそれが、ヒュッ、と気管支の方に入った。
ゴホゴホと激しく噎せ、デスク下に屈み込む。立ち上がったアメリがパッと見下ろし、隣の上司が背中をさすりながら心配の声を上げる。
涙目になりながら顔をあげると、振り返ったベックマンの向こうに驚いた顔でこちらを見るシャンクス。
大丈夫か?と心配を寄越してくれる彼が手に持つボトルが目に入って、喉と肺の痛みが強くなった気がした。