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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第28章 度外視の恋慕


そう離れていない自宅兼職場に向かう。

ほとんど通ることのない時間帯の通り。
通勤者の多さに少し驚きながら、サイドウインドウを少し開けて煙草を咥える。
100円ライターで火をつけ、一つ深く吸うと、🌸がカフェ・オ・レの香りと言い当てた独特の香りが広がる。

地下の駐車場に車を入れ、携帯灰皿に吸い殻をしまう。
いつものようにルームキーでエレベータを呼ぶ。
自宅のある階層に上がる間に、携帯で予定を確認する。16時半頃に出れば間に合うな、と開いた扉を抜けた。
社内の人間が確認できる自分のスケジュールに「16時より不在」の予定を入れる。
これで、急ぎがあれば早めに書類が回るはずだ。


自宅に戻り、黒のワイシャツとスーツパンツに着替える。
根が面倒くさがりなので、会議や来客の予定がなければ適当な部屋着で執務室に降りることも多く、秘書課の社員に「それ、パジャマですよね」と呆れ声で指摘される。
社風からも、スーツを強要していないし、部署によっては作業着や機動性を鑑みてスポーツウエアの着用が定着している部署もある。
それでも「長付き」であれば、その殆どがスーツを着用しているが。

社内勤務の予定のみの姿は、誰も彼がこのビルの持ち主でテナント内最大企業のトップだとは、思わないだろう。
くたびれたサンダルに、シルエットのゆるいスウェットやカーゴパンツ。ワイシャツではない白シャツを羽織っただけで、まともにセットもしない癖っ毛の髪を掻きながら、執務室の奥のフロアで新聞読んだり時には居眠りしたりと自由気ままに過ごしているのに、社の人間は皆、彼が社長であることになんの違和感も抱かない。

それは、彼の手腕と考えに共感し、それを許されるだけの能力があることを十二分に理解しているから。

まだ設立から日の浅い「RedForce」が、一等地にこれだけの大きさのビルを持ち、全国に支店を置く大手として世の中に定着しているのは、彼の手腕と周囲の幹部による絶妙なバランスによるものであった。
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