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依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長

第28章 度外視の恋慕


勤務地に入る手前。ガラスでメイクと身だしなみを確認する。

(よし!ばっちり)

男の存在を思わせるアクセサリーは、つけない。
メイクは、ナチュラルな中に少し濃いめの赤リップで女を出す。
あからさますぎないタイトなスーツ。
少しでも彼に近づくための7cmヒールは絶対に赤。
会社名にもある彼の代名詞の色。


社員証で入館し、通用口脇の新聞受けから数部の新聞を取り出す。まずは給湯室のコーヒーメーカーのスイッチを入れて、彼の執務机の前にある応接セットのローテーブルに、上から経済紙、日刊紙の順に決めた並びに少しずらして重ねる。
片付いている執務机はそのまま、未確認箱に溜まっている書類をざっくり確認して、決裁を急ぐ順に並べ替える。


給湯室へ移動したら、温まったコーヒーメーカーに豆と水をセットして、カップホルダーにインサートを入れる。
そこまでしたら、自席についてスケジュールと社内メールを確認しながら、引出からノンカロリーシュガーを2つ出した。

「おはようございます!セシル先輩」
「おはよう」
早めに出勤する後輩のアメリ。荷物を置くと彼の机を一瞥して溜息。ぱっと顔を上げてすこし早足で給湯室へ。
あまり経たずに出てきて、また、溜息。
(誰にもやらせないんだから)
入社以来、朝のルーティンを欠かしたことはない。

彼が机についてまずすることは、新聞に目を通すこと。
いつも3紙目を開くタイミングでコーヒーを一口飲む。
猫舌だから、早めに入れて冷ましたコーヒーは、出勤後すぐに机に置く。
チラ、とパソコン画面右下の時計を確認する。
フレックスタイム制度を導入しているこの会社に決まった出勤時間はないけれど、なんとなく部署部署で出勤してくる順番は決まりができている。
タイムカードなんて打たない彼が出社するのは、いつも10時すぎ。8時40分を差す時計にカップを取る。


「何だ、みんな早いな」
(えっ?)
自分だけじゃなく、後輩や隣係の社員も驚いている。
コート掛けのハンガーにジャケットをかけて応接セットのひとり掛けソファに座ると、ローテーブルに広げた経済紙に、両膝に両肘をついた前屈みの体勢で目を通している。

いつもよりだいぶ早いシャンクス社長の出社に驚いたが、いつもと違う時間帯に姿を見れたことに浮足立ちながら、後輩に譲ることなく給湯室へ早足に向かった。
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