依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第27章 二人の朝をはじめよう
(よし!好タイム)
シャワーを慌てて済ませ、2つ分の弁当とおにぎりを用意したら最後に身支度にかかる。
軽く髪をまとめて鏡に向き合う。
(いやっ増えてるっ!!)
ラウンドネックのアンダーから見える首元に、赤、朱、あか。少し顎を上げて確認すると、首の下半分には散らばっている。
(どうしよう!隠せる服、あるかな)
メイクの前に慌てて衣装室に駆け込み、できるだけ首元の詰まった服を探すがすべてを隠せない。
「どうする?コンシーラー?絆創膏?」
まずいまずい、とくるくる回る。
「🌸、」
「はいっ?!」
パンツ一枚の濡髪で衣装室に顔を出したシャンクスが、洗濯終わってるぞ、と洗濯機を指差す。
「干す時間、あるか?」
「干していかないとシーツくしゃくしゃになるから」
まずはそっちから、と脱衣所に駆け込んで浴室乾燥機をつける。
大急ぎで干して衣装室に戻ると、唸って唇を撫でる。
「あ!そうだ」
そうだ、ともう一度呟いて引き出しを開ける。
白のスタンドアップカラーシャツの襟の内側に、太めにたたんだスカーフを巻く。
結び目をアスコットタイ風に纏めるといい感じに隠れた。
「勝った!!」
何に勝ったのかは、わからないけれど、これでひと目にはあとが見えない。
7時50分。
なんとかいつも通りに支度を終わらせた。
「ありゃ?」
どこ行った?と姿が見えない彼を探す。
ふわり、と香った風の元へ行くと、昨日と同じ格好で、いつかと同じようにベランダに凭れて煙草を咥えていた。
少し湿った髪が、風にゆらゆらと揺れている。
「ん、出れるか?」
煙草の火を消してサイズの合ってないサンダルを脱ぐ。
施錠よし、と鍵を指さすと、出るぞー、と玄関先から声をかけられ、通勤バッグとランチバッグ、同じものとコーヒーが入ったボトルを入れた紙袋を持って電気を消した。
「こっちだよ」
通勤ルートと逆に行こうとする彼を呼び止める。
「職場まで送る」
だからこっち、と手を引かれ、車を停めたコインパーキングへ。
「今日、何時に終わる?」
「定時は17時15分だけど、連休明けで少し業務詰まってると思うから目安は18時前後かな」
わかった、と頷く彼。
「時間の目処ついたら、連絡しろ」
向かいから来る自転車からさり気なく守ってくれる手を握ると、ふぁ、と欠伸をこぼすまだ眠たそうな横顔にひとり、微笑んだ。
