依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第26章 言葉でなくても❦
説明はしなかったけれど、リビングから見えないようにカーテンを引いて区切ったスペースを寝室としているのは、部屋の構造からわかっていたらしい。
簀子の上に畳んでいた布団の上に降ろされて、シャワー浴びたいなら済ませとけ、とだけ言ってカーテンを捲り出て行ったシャンクス。
ガチャン、と玄関のドアが閉まる音がして我に返る。
出ていったらしい彼にボーっとしていると、ダイニングに置きっぱなしのケータイがメッセージを受信した。
恐る恐る確認しに行くと、15分で戻る、とだけ彼からの伝言。
15分で何をしに行ったのだろうか、と首を傾げる。
「戻ってくるんだよね、」
出る直前、彼が残していった言葉を思い出して、キョロキョロと辺りを見回す。
(シャワー済ませてたほうがいいっ!?)
どうしよう、と携帯を握りしめてくるくると回る。
(下着、洗ってもらったとはいえ昨日のままだし...えっと、いや!あんまり悩んでる時間もない!)
汗を流すだけなら充分!とカーテンを払って着替えを取りに行く。
(どうしよう...)
畳んでいた布団に新しいシーツをかけて、衣装棚の前で悩む。未開封の、まだ袋に入ったままのそれ。使い時は今なのだろうけれど、非常に悩ましい。
(ええいっ!時間がないのだ!)
下着を入れている引き出しから、一番手前のブラックのセットを引っ掴んで、早足で浴室へと向かった。
§
緩く髪を束ねて、洗面所の鏡に向き合う。
「やめとけばよかった」
洗面台に手をついて項垂れる。
選んだそれは、去年、🎀から誕生日にもらったものだった。
キャミソール、ショートパンツ、ガウンがセットになったサテンのルームウエア。
(🎀は預言者かなんかなのっ?!よりによってなんで赤っ?!)
いや、ランジェリーはレッドも選びがちだけどっ!しかも、今は悩んでブラックにしたのに!
「やめよう。普通の、普通の部屋着に着替えるのだ」
ひとり呟いて脱衣所を出た時、インターホンが鳴ってビクッと肩が跳ねた。
(どうするっ?!)
流石にこのままはない!と聞こえるかもわからないけど、玄関に向かってちょっと待って!と言って、衣装棚のある部屋にガウンを放って、ろくに確認もせず、部屋着にしているネイビーのパーカーワンピースを慌てて着込んだ。