第3章 守る決意
杏「何度でも言うぞ。男は狼だ。狼と人間はそもそも仲間になれない。狼の甘言には耳を傾けるな。」
「杏寿郎くん、何か嫌な思いでもしたの…?ちょっと思考が偏ってる気がするけど…。」
つむぎが困ったように首を傾げると、杏寿郎はもどかしく思ってつむぎの頬を両手で挟んだ。
杏「では包み隠さず言おう!俺に体を売る代わりに、『弱体化させた鬼を譲って欲しい』と言ってきた女性隊士がいた!!」
「…えっ、………えっ!?きょ、杏寿郎くんはっ」
杏「勿論断った!!当たり前だろう!!!」
杏寿郎は赤い顔のつむぎを見つめ、その頬から手を離すと今度はつむぎの両手をしっかりと握った。
杏「恐らく昇進の為だろう。昇進すれば支給される金も増える。その為に身を売る女性隊士がいるんだ。もし…、」
そう言いながら、呆気に取られているつむぎの小さな手をぎゅうっと握る。
杏「……もし、そのような女性ばかりだと思っている男が君に近付いたらと思うと…気がどうにかなりそうだ。」
つむぎは強い感情が込もった声を聞くと、安心させるように杏寿郎の手を握り返した。
「……分かった。そんな事があったんだね…。杏寿郎くんの言う通りにする。任務が終わったらすぐ帰る。帰ってお家で鍛錬でもするよ。だから安心して。」
それを聞いた杏寿郎はやっとほっとしたような笑みを浮かべた。
杏「ああ、ありがとう。任務が被らなくとも時たま会いに来る。それまで良い子にしていてくれ。」
「……うん。待ってるね。」
二人はそうして約束を交わし、最後は笑顔で別れたのだった。