第3章 守る決意
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「じゃあ行ってくるね!」
つむぎは腕を組んで眉を寄せる杏寿郎に手を振り、小走りをして相模に付いていった。
その姿が見えなくなると、長谷川はすぐに杏寿郎の左肩を掴んで地面を指差す。
杏「何を、」
杏寿郎が問うより前に長谷川はしゃがみ込んで地面に文字を書き始めた。
長『蕎麦屋に行くと言っていたぞ』
杏「…それがどうしましたか。」
そう返ってくると長谷川は頭を抱えた。
長『男女が蕎麦屋へ行くという意味を知らないのか?』
杏寿郎は首を傾げた。
長谷川は手のひらで砂を払って文字を消すと、再び指を走らせる。
長『蕎麦屋の二階には同衾する為の部屋があるんだよ』
そこまで言っても杏寿郎は首を傾げたままだ。
長谷川は一度杏寿郎の頭をぽこんと殴った。
しかし———、
———『このままじゃ五十嵐が相模さんに食われるってことだ』
その文を読んだ杏寿郎は目を見開いてバッと駆け出した。
長谷川が後ろで何か叫んだ気がしたが杏寿郎にはよく聞こえなかった。