第3章 守る決意
杏「長谷川さん!左に避けて下さい!!」
長「え!?ちょ、なに」
戦い始めてすぐ、杏寿郎を後ろに守りながら戦っていた長谷川は戸惑いながらも左に避けた。
反対したくても杏寿郎には聞こえないからだ。
長(ああもう!静かに待っとけって言いたくても伝える手段が、)
杏「炎の呼吸、伍ノ型——炎虎ッ!!!」
見開いた目には炎の虎が映った。
長「な………、」
そして、鬼は笑えてくる程に容易く斬られ、塵となって消えていった。
長(は…斬った、のか…?一撃で…って…うそだろ…………。)
呆然とする長谷川の前で、杏寿郎は惚れ惚れするような所作で刀を納める。
杏「………………。」
そしてハッとするとバッと顔を上げて大きな目を長谷川に向けた。
杏寿郎の所作に見惚れていた長谷川は思わず肩を跳ねさせてしまった。
長「あ……、れ、煉󠄁獄、お前強いん」
杏「まだ気配が消えていません!」
長「え、」
杏「他の鬼がいます!!」
それを聞いた長谷川は緩んでいた気を引き締め直した。
長「それが本当なら大変だぞ。気配…ってお前」
杏「すみませんが分かりません!時間が惜しいので付いてきて下さい!!」
長「あっ」
杏寿郎はそう言い放つとダッと駆け出した。
長谷川はそれに付いていこうとするも、じりじりと引き離されていく。
長(この速さ…強さも…、実力はとっくに辛を超えてるだろ!!)