第3章 守る決意
杏「階級、癸!煉󠄁獄杏寿郎です!応援に参りました!」
「同じく癸、五十嵐つむぎです!情報の共有をお願いします!」
四人の先輩隊士達はやる気溢れる二人を見て少し頬を緩めた。
相「俺は庚の相模大樹だ。こっちは長谷川徹、八重草孝、綾瀬川弘…みんな辛だ。」
つむぎはその説明を受けながら全速力で筆を走らせた。
そしてふぅと一息吐くと杏寿郎に見せる。
杏「…………。」
杏寿郎は名前と階級の走り書きを見て、太陽のような笑みを浮かべた。
杏「つむぎ、ありがとう!相模さん、長谷川さん、八重草さん、綾瀬川さん、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
隊士達はそんな二人のやり取りを見て首を傾げた。
つむぎはそれに気が付くと、少し気まずそうな表情を浮かべて杏寿郎に視線をやる。
「実は彼、先日の任務で鼓膜を破いてしまいまして…、会話が出来る状態ではないんです。」
相「会話が出来ない、か。」
綾「それで働けるのか…?」
隊士達は揃って眉を寄せ、『使い物にならない増援が来た』という顔をした。
「で、ですが、私が紙に書いて手助けしますし、彼はとても頼りに」
杏「情報を共有して頂けないだろうか!!日暮れまでもう時間が無い!!!」
スパンと放たれた杏寿郎の言葉に隊士達は固まった。
つむぎが隣を見ると杏寿郎は口角を上げて笑顔のような表情を作っている。
(杏寿郎くんて結構せっかちなのかな。普通もう少しやんわりとした言い方をすると思うけど…。)
相「あ、ああ…。もっともだな。事情を話そう。」
相模は呆気に取られながらもそう返し、そしてようやく任務の説明が行われた。