第3章 守る決意
千「そうだったんですか…。」
千寿郎は気まずそうに相槌を打つ。
その眉尻は相変わらず垂れたままだ。
つむぎはその杏寿郎とは異なる眉を見つめ、少し表情を和らげた。
「私が駆け付けた時、何もかもが終わっていました。私、初任務で何も出来なかったんです。惨状に生きていてくれたのは杏寿郎くんだけで…だから私……、」
千寿郎はつむぎが表情に反して強い自責の念を抱いている事を悟り、更に眉尻を下げた。
千「す、すみません…!あの、」
「気にしないで下さい!杏寿郎くんもそんな目で見ないで!」
杏寿郎はいつの間にか眉を寄せていた。
つむぎは杏寿郎が更に眉を寄せたのを見ると、慌てて懐紙を取り出した。
(えっと、『どうしてここまでするのかと聞かれたから、昨夜の私について話していただけ。』でいっか…。)
そう思うと杏寿郎の前まで行き、文字を見せた。
杏(昨夜のつむぎ、か。)
杏寿郎は呆然としていたつむぎを思い出し、一度口をきゅっと結んだ。
杏「…千寿郎、戸惑わせてしまったようだな。詳しく話さずすまなかった。つむぎも睨んで悪かった。千寿郎が泣き出しそうだったのでな。」
それを聞いた千寿郎の耳が赤くなった。
(……千寿郎くんの耳、まっかだ。)
「大丈夫。何も問題ないよ。」
つむぎは申し訳なさそうな顔をする千寿郎と、優しい表情を浮かべる杏寿郎に微笑んだ。