第2章 煉󠄁獄家
その可能性がある事は杏寿郎も分かっていた。
しかし、自身の中で思うのと、人に指摘されるのとでは大きな違いがある。
杏寿郎は振り返ったつむぎを見つめて優しく微笑んだ。
杏「君もそう思ってくれるか。」
つむぎは杏寿郎を真っ直ぐに見つめ返しながらしっかりと頷く。
そして、再び鉛筆を手に取った。
『お父様が言ってた。炎柱様は家族思いの優しい方だったって。奥様とご子息が大事で仕方ないって言ってたって。心配じゃないなら隊士になった事をわざわざ怒らないよ。』
そう書いて再び振り返ると、杏寿郎は眉尻を下げながら微笑んだ。
杏「…ああ、そうだな。ありがとう、五十嵐。」
その声は掠れ、ほんの少しだけ震えていた。