第2章 煉󠄁獄家
杏「いや、君に会えば何か変わるかもしれないと勝手に期待していたんだ。先にもっと伝えておくべきだった。」
そう言うと手を握り返し、再び口を開いた。
杏「昔はああじゃなかったんだ。母上を亡くしてからあの様になってしまった。鬼殺隊士を侮辱する言葉を口にしてしまう。」
「…………………………。」
杏寿郎は目を伏せるつむぎに視線を移し、何も言わない様を見ると申し訳なさそうな表情を浮かべた。
杏「なので俺にも鬼殺隊に入るなと言い、最終選別から帰った時にも酷く怒っていた。きっと初任務の報告など聞きたくなかっただろう。気にする必要はない。」
「…………それって…、」
つむぎは視線を上げて杏寿郎を見つめ返した。
そして、杏寿郎の手を離すと再び鉛筆を手に取る。
杏「…………………………。」
書き出される文字を見つめていた杏寿郎は握り拳を作り、瞳を揺らした。
そこには、
『炎柱様は煉󠄁獄くんが心配なんじゃないのかな。』と書かれていた。