第2章 煉󠄁獄家
杏「五十嵐?紙に書いてくれないか。」
槇「五十嵐……ああ、その髪。風の五十嵐か。」
そう言われるとつむぎはパッと明るい表情を浮かべながら顔を上げた。
「は、はい!五十嵐かざみは私の、」
槇「風柱になって一年足らずで足を飛ばした男か。」
その言葉につむぎの頬がカッと熱を持った。
五十嵐家の自慢であるかざみは、風柱であった時に片足を失って引退していたのだ。
つむぎは太腿の上で拳を握り、唇を噛み締めながら俯いた。
杏「……………………。」
様子を見ていた杏寿郎はそんなつむぎの背を優しく撫でた。
杏「父上。こちらは五十嵐つむぎ、俺の同期です。暫くここで暮らして俺の耳の代わりをすると言ったくれたのですが許して頂けるでしょうか。」
つむぎがちらりと視線を上げると、槇寿郎はもうつむぎの方を見ていなかった。
代わりに書物を読んでいる。