第2章 煉󠄁獄家
杏「まずは父上へ報告だ!」
その声は期待を孕み、同時に緊張も孕んでいた。
(……負傷して帰ったから炎柱様にがっかりされるとでも思ってるのかな…?)
しかし、つむぎは前を歩く杏寿郎の表情を確認する事ができなかった。
杏「……父上!ご報告に参りました!中へ入っても宜しいでしょうか!!五十嵐、許可が出たら君も中まで付いてきてくれ!」
「う、うん…。住まわせてもらえるよう交渉しなきゃなんだもんね…。」
杏「長い文は紙に書いてくれ!」
「ま、待って。しー。」
つむぎは部屋の中で人が動く気配を感じ、杏寿郎に人差し指を立てて見せた。
そして、どきどきとしながら自身の毛先の色を見つめる。
(お父様と似ているこの色を見て私が娘だと気付いて下さるかな…。もしかしたら元気を出してくれるかも…。)
槇「入れ。」
淡い期待は部屋から聞こえたその声と共に跡形もなく消え去ってしまった。
それ程までに機嫌の悪い低い声だったのだ。