第9章 (※)依存
杏(つむぎは色恋への理解が浅く、求愛されればついて行ってしまうような子だった。そのくせ相手を愛そうとしないのだから質が悪い。そのせいで手に入れても乾きが収まることは無かった。だが…、)
下で居心地悪そうに頬を染めているつむぎは、どう見ても異性に抱く好意を自身に向けているように見えた。
それを認めると杏寿郎の口角が上がる。
杏(…百歩前進!だな!!そして百倍愛い!!)
そう思いながら敢えて声を掛けずにつむぎの頬を撫でる。
酷く優しい撫で方につむぎは却って肩を跳ねさせた。
「きょ、杏寿郎くん…。なんで黙ってるの…?」
そう問われた杏寿郎は優しく微笑んでつむぎの頬の上に片手を留めた。
杏「つむぎ、愛し合っている間は『杏寿郎さん』と呼んでくれないか。」
「……杏寿郎、さん…?」
杏「ああ。」
つむぎはそう呼ぶことで、より杏寿郎を大人の男として認識してしまった。