第9章 (※)依存
———
杏(……愛らしく強請ってくれればと思っていたのだが…参ったな。)
杏寿郎はそう思いながらビクつく隣の布団の山に目を遣った。
つむぎはなんとか声を抑えていたが、乱れた息遣いまでは隠せていなかった。
繋がれたままの左手も汗ばんでいる。
このままでは生殺しだ。
杏( "これ" の苦痛は蝶屋敷でうんざりする程に味わったんだ。もう、起きていると白状して抱いてしまおうか。)
そう思って体を起こそうとしたが、息の乱れ具合いを感じると留まった。
どうやらつむぎはそろそろ達しようとしているらしい。
杏寿郎は寝たフリを続けながらごろりと寝返りを打ってつむぎの方を向いた。
その時——、
『杏寿郎くん…っ』
その押し殺した声に杏寿郎は目を見開いた。
今までつむぎは慰めている時に杏寿郎の名を呼んだことなど無かった。