第7章 二人切り
杏「大丈夫だと言ったが何事も無かった訳ではないだろう。何が」
「じ、自分の限界に挑戦してただけ…っ!それより…、」
つむぎはそう言いながら杏寿郎の手を握って心配そうに顔を覗き込んだ。
「炎柱様…ううん、槇寿郎様とのこと、手紙に書かなかったでしょう?なんで…?」
そう問われると杏寿郎は少し固まってから眉尻を若干下げて微笑んだ。
杏「それに関しては会った時君に直接慰めてもらいたかったのでな!」
「……慰める…?杏寿郎くんを……?」
つむぎは杏寿郎の弱いところを殆ど見た事がない。
見たのは四年前、たったの一回だけだ。
杏「慰めるとは大袈裟だったろうか。昔、俺を勇気づけてくれたろう。その時の事を思い出してな。」
「槇寿郎様の考えについての……?」
杏寿郎の震えた声が印象的であった為、つむぎもその時の事はよく覚えていた。
つむぎの問いに杏寿郎は頷いて答えた。
そしてつむぎの髪を優しく梳く。
唐突な甘い仕草につむぎはパッと顔を赤らめた。