第7章 二人切り
杏「どんな道を歩んでもお前は立派な人間になる!燃えるような情熱を胸に、」
杏寿郎は手を離すと千寿郎をしっかりと抱き寄せた。
杏「頑張ろう!頑張って生きて行こう!寂しくとも!」
頼もしい兄の腕の中、千寿郎はただ『自身も認めてもらえないのかもしれない』と思って泣いていた訳ではなかった。
千(なぜ、僕のことばかり気にするのですか…。一番悔しいのは……兄上なのではないのですか…。)
千寿郎は自身を鼓舞し続ける優しい兄に涙していたのだ。
———
「…………要…。」
庭で鍛錬をしていたつむぎは見付けた要を止めようと右腕を上げた。
要は腕に行儀良く止まると頭をふるふると振る。
要「手紙ヲ預カッタ!」
「ありがとう。お豆あげるから少し待ってて。返事が必要かもしれないから。」
つむぎはそう言いながら縁側へ向かい、要を一度下ろすと手紙を丁寧に解いた。
そしていつも自身の鴉・桜にあげている豆を懐から取り出し、手のひらに乗せた。