第7章 二人切り
千「兄上!」
少し目を伏せて廊下を歩いていると、千寿郎が声を掛けて駆け寄ってきた。
千「父上は喜んでくれましたか?ぼくも柱になったら…父上に認めてもらえるでしょうか?」
杏寿郎はその問いにスッと答えることが出来なかった。
代わりに廊下に膝をつき、千寿郎の両腕を握ってしっかりと視線を合わせる。
そして口角を上げて口を開けた。
杏「正直に言う。父上は喜んでくれなかった!どうでもいいとのことだ。」
それを聞いた千寿郎の眉尻が更に下がってしまう。
杏寿郎はそんな千寿郎に明るい顔を向ける。
杏「しかし!そんな事で俺の情熱は無くならない!心の炎が消えることはない!俺は決して挫けない!そして、」
そう言いながら千寿郎の手を優しく握る。
杏「千寿郎、お前は俺とは違う!お前には兄がいる。兄は弟を信じている。」
力強くそう言うと千寿郎の頬に大粒の涙が伝う。