第7章 二人切り
杏寿郎は千寿郎の頭を撫でて部屋に戻っているように伝えると、口をきゅっと結んで父の部屋へ向かった。
杏(そうだ、あの時…、俺は一目惚れだと言っていたが本当は……、)
そう思っている間に目的の部屋の前まで来てしまった。
杏(…今は目の前の事に集中しろ。父上に報告だ。)
杏寿郎は短く息を吸った。
杏「父上!杏寿郎です!お話があるのですが少々よろしいでしょうか!!」
待っていると布が擦れる音がした。
杏寿郎は父親が今も布団の上にいるのだと悟り、握り拳に力を込めた。
杏(まだ、)
槇「入れ。」
低く声を掛けられハッとする。
杏「失礼します!」
杏寿郎はすぐに返事をすると、静かに戸を開けた。
父親はそんな杏寿郎を見てもいなかった。
布団に寝そべったまま背を向けていたのだ。