第7章 二人切り
———
杏「では俺はお館様の元へ改めてご挨拶に向かう。その後は実家に。屋敷の手配が済んだらすぐ要を送って報せよう。」
「…うん。」
五十嵐家の門前にて、杏寿郎は妙にしおらしいつむぎを面白がるように見つめた。
杏「まるで、恋する乙女のようだな。」
「え……、」
二人は互いの反応に固まった。
杏寿郎が固まったのは、つむぎが肯定を示すように赤くなったからだ。
そんなつむぎは今、眉尻を下げて罪悪感たっぷりな表情を浮かべていた。
杏寿郎の言葉が痛かったからだ。
杏寿郎はつむぎを "まるで" 恋する乙女、と表現したが、二人は恋人だ。
不適当な表現だろう。