第7章 二人切り
杏「どうし」
「待って!ま、待って…!!」
幼い頃から『結婚するならお兄様よりかっこいい人』と言い続けてきたつむぎであったが、杏寿郎はその兄二人の身長を越してしまっていた。
(あれ…杏寿郎くんってこんなに…、)
今までは頬を染めても "なんとなく" 照れくさい、恥ずかしいといった理由が多かった。
そして、杏寿郎の男としての面もどこか客観的に見ていた。
清らかな雰囲気を持っている、顔立ちが整っている、剣の腕が立つ、様々な印象を持っていたが、半分は自分の意見でないような不明瞭な感覚を持っていた。
それが今、自身の内から熱く強く湧き上がるように生まれてくる。
(杏寿郎くんって…こんなに……、こんなに、かっこ良かった…っけ………。)
そう自身の気持ちを自覚するとつむぎは更に赤くなった。
杏寿郎は返事を諦めると、そんな珍しいつむぎを愛で始めた。
するりと親指の腹で赤い頬を撫でれば、つむぎは肩をビクッと跳ねさせる。
杏寿郎はそんな反応に堪らなく満たされた。