第7章 二人切り
杏「君は本当に俺がいなければ駄目だなあ。」
「……そんな…ことは………、」
そう口を尖らせるつむぎの顔を、杏寿郎は優しい笑顔で覗き込む。
拗ねているのに、いつもと違って歯切れが悪いつむぎの眉尻は下がっていた。
杏(ああ、愛いなあ。愛い。)
そう思いながら膨れた頬を指の背で撫でる。
杏「それは本当か。一週間後から深澤は此処に張り付くだろう。だが君は何も把握していなかった。あのままだったら君は蝶屋敷を利用したかもしれない。」
「し、しのぶさんもいるし…、」
杏「先日の一件も蝶屋敷内で起こった事件だぞ。俺が胡蝶に病室を見て来てくれと頼まなければ発覚しなかったかもしれないんだ。」
「…………………………………………。」
つむぎが叱られた仔犬のような顔で黙りこくると、杏寿郎はその頭を優しく撫でた。