第7章 二人切り
その顔は強い怒りに歪んでいる訳でも、冷たい怒りを孕んでいる訳でもなかった。
「…………………………。」
つむぎは杏寿郎の心配そうな表情を見て勢いを失った。
杏「君が教えてくれないので胡蝶伝いに聞いた。先日の男には呼吸を乱されたそうだな。そのせいで抵抗出来なかったと。」
その問いに眉尻を下げて小さく頷く。
すると杏寿郎は握っていた手に少しだけ力を込めた。
杏「君が力に関して強い劣等感を抱いている事は知っている。なるべく口を出さないでやりたいとは思っている。だが、それは君に害が及ばないのなら、の話だ。」
「……深澤さんはそんなことしないよ…。わたし、これでもあの人の命の恩人なんだよ?それなのに変なことしようだなんて…普通思わないし……。」
そう答えるつむぎに杏寿郎は小さく息を吐き、腕を伸ばして手紙を一通開いた。