第7章 二人切り
「で、でも持ち歩かなかったよ。」
杏「ああ、それは偉かったな。だが及第点には及ばない。相手には『受け取ってもらえた』と思われているぞ。」
「それは…、」
自身としては上手く対処したと思っていたつむぎは段々と眉を寄せていった。
「……杏寿郎くんってちょっと…気にし過ぎじゃない…?いいじゃん。秘密で会ってたわけじゃないんだし。」
調子を取り戻したつむぎがムッとしたようにそう言うと、杏寿郎も眉を寄せる。
杏「先日の一件を忘れた訳ではあるまいな。男の方から会いに来ていたらどうしていたんだ。この屋敷の所在は割れていたのだぞ。」
「さすがに一般人相手にはおくれなんてとらないよ!」
暗に非力さを指摘された気がしたつむぎは噛み付くように言い返した。
すると杏寿郎はつむぎの両手をしっかりと握って顔を覗き込んだ。