第1章 始まり
(初日から家に帰らないなんて怒るかな…。)
杏「ここだな。すみません!鬼殺隊の者です!!」
「こ、声大きいよ…!」
まだ朝早い時間、杏寿郎の大声はよく響いた。
するとすぐに優しそうな初老の女性が出て来た。
女「鬼狩りさ、」
杏「ありがたい!人数は見ての通りむ゙ッ」
つむぎは女性の声を遮って話しだした杏寿郎の口を塞ぎ、眉尻を下げながら微笑んだ。
「すみません。この人は鼓膜を破いてしまっていて耳が聞こえない状態なんです。どんな所でもいいので部屋を用意して頂けますか?」
女「ええ、勿論です。こちらへおいで下さいませ。」
つむぎはほっとすると杏寿郎の口を解放し、口に人差し指を当てて『しーっ』と言った。
そして、それを見た杏寿郎は素直にこくりと頷いたのだった。
———
「ここ、煉󠄁獄くんの、へや。ごはん、あと少し。良い?」
杏「俺の部屋はここ!朝餉は少し!だろうか!」
「んーちょっと違う!来て!」
つむぎは部屋に入ると懐紙と鉛筆を使い、朝餉が出来るまであと少しだという事を伝えた。
それを見た杏寿郎の顔にパッと明るい笑顔が浮かぶ。