第1章 始まり
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杏「五十嵐、耳が聞こえないだけなので付き添いは不要だぞ。」
つむぎはそれに首を振る。
そして、自身を指し、次に杏寿郎の耳を指した。
それと共に口を動かす。
杏「『わたしが』、『みみ』……か?」
その問いにつむぎはこくんと頷いた。
そして、つむぎの頑固そうな瞳に杏寿郎は折れ、笑みを作った。
杏「では頼るとしよう!君の鴉にここから近い藤の花の家はどこか聞いてくれ!ここは俺の家から遠いのでな!」
つむぎはそのさっぱりとした声音を聞くとほっとした笑顔で頷いた。
一気に同期を半分失い、杏寿郎と離れがたくなっていたのだ。
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(少し小さなお家…。)
「桜、これをお家に届けて。」
つむぎは藤の花の家に着くと、すぐに両親に向けて鴉を飛ばした。