第7章 二人切り
(そう言えば私のこと覚えてるって言ってたな…。でも、)
「杏寿郎くんには言われたくないよ。私よりひどそう。」
つむぎがそう言って軽く睨むと、杏寿郎は優しい微笑みを浮かべた。
杏「責めたように聞こえてしまったのならすまない。君が心配なだけだ。お互い早く治るよう努めよう。」
「…………うん。」
あの一夜以降、杏寿郎は一貫して優しい態度を取っていた。
しかし、つむぎはどうしてもあの意地悪な杏寿郎のイメージを拭えずにいる。
(わたしが怒らせること言ったからあの時だけあんな雰囲気になったってこと…?これからはもう優しいまま…?でも感情を溜め込んでたから歪んだのかもって話も出てたし…。)
そう思いながら首を傾げる。
杏寿郎は面白がるような笑みでそんなつむぎの頭を撫でた。
杏「どうした、急にしおらしくなって。」
「え、…ううん。早く治したいなって…思っただけ。」
つむぎはそう言うと誤魔化すように視線を逸した。
杏「……そうか。」
しのぶはそんな二人を見て少しだけ首を傾げた。
し(上手くいっているように見えるけれど…、)
し「……とにかく絶対安静、ですからね。お互いに見張っていて下さい。」
杏「うむ!!」
「はい。」
その返事を聞いたしのぶは少し微笑んでから病室を出て行った。