第7章 二人切り
杏「お早う。今はまだ昼前だ。比較的早く寝たからな。」
「そっか。体はだいじょうぶ…?昨日…、その、色々と……動いてたけど…、」
つむぎがそう言葉を濁しながら言うと、杏寿郎は微笑んだまま首を傾げた。
杏「大して動いていない。大丈夫だ。それより君の方が大変だったろう。変わりはないか。腹の痛みはどうだ。」
そう問われるとつむぎは頬を染めながら杏寿郎の胸に顔を埋めてしまった。
杏「……つむぎ?痛むのか?待っていてくれ、すぐ胡蝶に」
「痛くない!」
杏寿郎は目を丸くして胸に張り付くつむぎを見下ろした。
杏「だが、」
続きを言う前につむぎが杏寿郎の口を塞いだ。
つむぎは赤い顔で眉を寄せている。
「な、なんで…何でそんな普通なの…………?」
そう問われた杏寿郎は驚いたような表情を浮かべた後、眉尻を少し下げて優しい表情を浮かべた。
その温かい雰囲気を感じ取ったつむぎは恐る恐る手を外す。
口を解放された杏寿郎は礼を言うようにつむぎの頭を撫でた。
杏「君は恥を覚えているようだが、俺はただただ嬉しかったんだ。」
その優しい声を聞いたつむぎは少し肩の力を抜いた。
杏「随分と意地悪をしてしまったな。君が恥を覚えたのは俺のせいだろう。すまなかった。」
「………………ううん……だいじょうぶ…。」
そう言うつむぎはやっと普段の彼女らしい花咲く笑顔を浮かべたのだった。