第1章 始まり
「耳…、聞こえないの…?」
つむぎは手で耳を指し、次にばってんを作ってみた。
そうすると杏寿郎は頷いた。
杏「鬼は斬った。笛の音を聴くと身動きが出来なくなるという血鬼術だった。それより…、」
そう言いながら歩み寄った先には生き残った幼子がいた。
杏寿郎はその子を抱き締め、そして、そこに居た仲間も腕の中に収めた。
目を見開いたつむぎの呼吸が浅く速くなる。
「……ま…待って…、煉󠄁獄くん…その人……律、」
杏「先程の情報、柳田が、佐倉が…皆が指文字で知らせてくれたんだ。」
杏寿郎はつむぎの動揺した声が聞こえていたかのように説明した。
そんな杏寿郎には動揺がない。
(……あの時の違和感はこれだったんだ…。)
つむぎは杏寿郎がこれからの意気込みを語る二人に向けていた笑顔を思い出した。
(煉󠄁獄くんは二人が死んでしまいそうだと思いながらも鼓舞していたんだ。)
そう思うとつむぎは振り返り、駆けて来た隠達に状況を説明した。