第6章 ※やり直し
「…っ」
男に付けられた噛み跡を思い出したつむぎは思わず杏寿郎の顔を押した。
「だ、だめ!ここは服を着ても見えちゃう!」
杏「今日のように髪を下ろしていれば大丈夫だ。」
(……でも杏寿郎くんはあの人が残した何かに気付いたじゃん…。)
また嫉妬で苦しくさせないよう言葉にはしなかったが、杏寿郎の行動は許容出来ない。
「だめったらだめ。鍛錬中にお父様が発見したら卒倒するよ。」
杏「君、足を負傷していたろう。軽症には見えなかったがもう家へ帰るつもりなのか。」
「あ……、そうだった。」
つむぎがそう言って呆けた顔をすると、杏寿郎は微笑ましそうにその顔を覗き込んだ。
杏「うっかりしていたのか。珍しいな。」
「うん。うっかりしてた。じゃあ…、まだ少し話せる時間あるんだね。」
つむぎはそう少し嬉しそうに言った。
一方、杏寿郎は首を傾げてそんなつむぎの顔を見つめた。