第6章 ※やり直し
杏「俺が炎柱になる代わりに父上は引退されるんだ。そうしたら夜にゆっくり寝てもらいたいと思っている。静かな屋敷でだ。千寿郎も随分と大きくなった。俺が煉󠄁獄家にいる必要はないだろう。」
「……そう、なんだ…。炎柱様の為に…。」
槇寿郎を思い出すと少し眉尻を下げた。
煉󠄁獄家で過ごしていた時、つむぎは父のかざみを侮辱した槇寿郎のことを徹底的に避けていた。
なので正直なところ、杏寿郎の親孝行ぶりには全く共感出来ずにいる。
杏寿郎はそんなつむぎの気持ちに気付いていた。
杏「そんな顔をするな。いつか分かり合える。俺は君と父上が笑い合える未来を信じている。」
「…………杏寿郎くんって心がきれいだよね……?」
杏寿郎は唐突に出たその言葉が疑問系であったことに首を傾げた。
杏「どういう意図で訊いたんだ。」
「………………だって…、」
つむぎは見慣れた清い雰囲気の杏寿郎を見つめてから眉尻を下げて視線を外す。